近年は少子高齢化の進行や近所付き合いの希薄化や核家族化などの社会的背景や、価値観の多様化の影響もあり、家族葬への関心が高まってきています。
「家族葬」に明確な定義はありませんが、一般に家族もしくは身内などの限られた者だけで執り行う小規模な葬儀を指します。
その参列者は「家族のみ」「親族のみ」とする場合もありますが、一方で「親しい人のみ」とする場合もあり、個々人や葬儀社によってその範囲は異なります。
家族葬だからといって家族しかお葬式に参列してはいけない、ということはありません。親族をはじめ、故人の親しい友人やご家族以外の故人の死を悲しまれている方々に参列していただいてもよいのです。
家族葬という言葉のイメージに縛られず、納得のいくかたちで葬儀を行うことが重要です。
家族葬は参列者の人数が少ないなど、こぢんまりとしたイメージがありますが、内容や流れなど、基本的に行うべきことは一般的なお葬式とほとんど変わりません。
家族葬には大きく3つのメリットがあります。
家族を中心とした近親者のみなので、多くの会葬者に応対する必要がなく、故人をしのぶ時間をゆったりと持つことができます。
参列者は身内が大半を占めるため、弔問客に気を遣うことなく、準備や応対など全体的な手間が軽減するため、精神的・体力的な負担が少なくなります。
事前に会葬者を限定するため、比較的小規模になることが多いです。そのため、通夜振る舞いやお返し物を予測で多めに準備する必要がなく、費用の目安が立てやすいとされます。
家族葬には、葬儀を知らせる範囲を線引きすることで起こりうる、注意すべき点や落とし穴があります。
故人の年齢や勤務先にもよりますが、ご家族が把握していない人脈がある場合、家族葬が済んだ後で故人を慕う方が次々に自宅に弔問に訪れ、対応に困ってしまったという声を聞きます。後々のことも考慮し、慎重にお知らせの範囲を検討した上で、家族葬を行うことをおすすめします。
家族葬は低料金でできる式と考えられがちですが、そうとは限りません。一般的に、葬儀費用の約半分が「儀式費用」で、残り半分が「参列者へのおもてなし費用」と「宗教者への謝礼」となります。このうち家族葬で軽減できるのは、「おもてなし費用」の部分のみです。香典による収入があまり見込めないため、費用の大半を喪主(遺族)が負担することになります。葬儀のプラン内容をしっかりと固めておかないと、結果として想定外の出費が重なる危険性も高く、本質的な節約にはつながりません。
故人が「家族だけで葬儀を行ってほしい」と望んでいたとしても、親戚に声をかけないことは難しいものです。
家族のみで葬儀を済ませた後に亡くなったことを伝えると、親戚や参列をご遠慮いただいた方から「なぜ早く教えてくれなかったのか」「葬儀に呼んでほしかった」と批判されることもあります。
家族葬をご検討される際は今後の付き合いを考慮し、慎重な対応が必要です。
いざというときに慌てないよう、事前に葬儀へご出席いただく方の範囲を決めておくことが大切です。家族を交えて交友関係や仕事の関係者などをよく整理し、葬儀に参列いただきたい方を選んでおきましょう。家族から連絡すべき相手や、葬儀に出席いただきたい方についてはリストを作成し、情報を共有しておきます。
後々のトラブルを避けるためにも「家族葬」で行うことをご親戚やご友人、隣近所に伝え、必ず事前に理解を得ておきましょう。
参列をお断りする場合、事前に訃報の中で「家族葬のため参列お断り」をお知らせしておきます。
香典や供花・弔電を辞退する場合はその旨も記載すると先方にも親切です。
事前に告知しても、当日参列にお見えになる方、どうしてもと香典をお渡しくださる方、供花・弔電を送ってくださる方がいます。その場合は、失礼にならないように、参列者への通夜料理の準備、返礼品の準備等が必要です。
また、事例は少ないですが、葬儀後に参列をご遠慮した方々に死亡通知を出す場合には、故人の遺志であったことや家族の意向による「家族葬」で執り行ったことを挨拶文に書き添えます。この際にも、香典や供花を辞退する場合は記載しておきましょう。